珪酸ソーダ(水ガラス)の『固化』するという機能。
それは土木分野で広く活用されています。
珪酸ソーダ(水ガラス)は反応性に富んだ基礎材料です。珪酸ソーダとさまざまな材料の化学反応を利用し、土木分野でも広く活用されています。土木分野では、次のような材料との反応が利用されています。
カルシウムは、セメントや消石灰の主成分。珪酸ソーダとカルシウムが反応すると、珪酸カルシウムを生成し、強固な固化物となることが知られています。
珪酸ソーダと炭酸水素ナトリウム(重曹)や硫酸水素ナトリウム(重硫曹)が反応すると、イオン交換反応により珪酸ソーダ中のシリカが重合し、シリカゲルが生成されます。
珪酸ソーダは中性領域で固化(ゲル化)する特性があり、pHの変動によりゲル化を制御します。また、酸性領域ではシリカゾルを生成し、反応性に富んだモノマーとなります。
土木分野では、エチレンカーボネートやグリオキサールが使用されています。反応性が緩やかなため、珪酸ソーダのシリカの反応率が高く、強固なシリカゲルが生成されます。
土木需要は、珪酸ソーダ需要の大きな柱となっています。珪酸ソーダが活用されている土木用途は、次の2つがメインとなっています。
薬液注入工法 | 軟弱地盤の改良。 土木工事を下支えする重要な役割を果たしています。 |
シールド工法の裏込め材 | 地盤沈下の防止。 都市部のトンネル工事には必要不可欠です。 |
軟弱地盤の改良。土木工事を安全に、計画どおりに施工するための必要不可欠な要素です。目的の軟弱地盤へ薬液注入材を注入し、地盤を固める薬液注入工法は日本全国で活用されています。薬液注入工法は、目的物を構築するための補助的な役割(仮設工事)として採用され、土木工事の裏方として役立っています。
トンネルや下水道等の地下構造物を構築する際、まず初めに立坑を掘ります。日本の地盤はさまざまな土質から成り立っており、工事予定地の地盤に砂層等の軟弱地盤が存在すると、立坑が崩れ落ちて危険です。また、掘削部分に地下水の流れがあると、立坑が水没して工事ができなくなります。このようなケースが予想される軟弱地盤の場合は、事前に計画的に薬液注入工法による地盤改良が実施されます。
安全性の高さで、水ガラス系注入材料が採用されています。
注入材は次の図のように分類することができます。固化時間(ゲルタイム)が設定可能な薬液系の材料には高分子系も含めると数種類あります。しかし、材料の安全性の見地から、使用できる薬液注入材は水ガラス系材料に限定されています。(薬液注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針;昭和49年7月10日 建設省)
地盤改良を施工する土質の状態により、無機溶液型、有機溶液型、懸濁型を使い分け、薬液注入工法の工種により、瞬結タイプ、中結タイプ、緩結タイプを使い分けています。
1973年、福岡県で高分子系の材料を使用した薬液注入工法の工事にて、薬害事故(薬液が近くの井戸へ混入し、住民が健康被害)が発生しました。当時の建設省(現国土交通省)は、各材料の安全性を確認し、指針を発令しました。
≪関係部分の抜粋≫
第2章 薬液注入工法の選定
2-3 使用できる薬液
薬液注入に使用する薬液は、当分の間水ガラス系の薬液で劇物または弗素化合物を含まないものに限るものとする。
水ガラス系薬液注入材の硬化剤には、さまざまな材料が使用されています。 薬液注入材は、2液性の材料が多く使用されています。A液に主剤となる珪酸ソーダ溶液、B液に硬化剤液で構成され、2液を混合することにより設定時間で固化させます。
注入材 = A液(主剤:珪酸ソーダ+水)+ B液(硬化剤+水)
硬化剤は、無機酸(鉱酸)や金属塩類、セメント、有機材料等、用途に合わせて幅広く使用されています。
無機溶液型 | ・無機酸(希硫酸、リン酸) ・金属塩(重曹、重カリ、重硫曹) |
有機溶液型 | ・エチレンカーボネート ・グリオキサール |
懸濁型 | ・セメント ・高炉水さいスラグ ・消石灰 |
東曹産業は、水ガラスメーカーの強みを生かし、『土質安定注入材ジオキープ』シリーズを販売しています。ジオキープは、さまざまな地盤へ対応可能な各グレードを取り揃えております。
地盤に注入された注入材は、どのくらい効果が持続するのか。地盤の状況(地下水の有無や振動、その他の条件)により効果の持続性は変わりますが、注入材の使用材料による長期耐久性能の付与に関する研究がなされました。
2000年頃を契機に、長期耐久性能を有する薬液注入材を用いた液状化対策工事にも使用されるようになりました。このように、目的物を造成する工事は本設工事と呼ばれ、それまでの仮設工事である補助工法から進化しています。空港や港湾、発電所等の液状化対策として、地震発生時のライフライン確保に役立っています。2011年に発生した東日本大震災でも、薬液注入工法による液状化対策を実施した場所は、地震による液状化現象が認められませんでした。
地盤沈下を防ぐことは、トンネル構築方法の一つであるシールド工法における一つの大きなテーマです。シールド掘進により発生する地山とセグメントの空隙(テールボイド)を裏込め注入によって充填し、地盤沈下を防止します。それと同時に、セグメントと地山を一体化させ、トンネルを安定化させます。
当初は一液性のモルタル系の材料が裏込め材として用いられていましたが、一液性の材料では裏込め材の必要な特性が得られないため、近年では二液性の材料が用いられ、珪酸ソーダの固化する機能により、裏込め材に必要な特性が付与されます。
裏込め材には、珪酸ソーダとカルシウムの反応が利用されています。代表的な配合として、A液にセメントベントナイト液(CB液)、B液に珪酸ソーダが用いられています。
接着剤用途では、段ボールや建材等の接着に珪酸ソーダ(水ガラス)が使われています。
従来は木材や紙、ガラス板等の汎用接着剤として使用されましたが、有機高分子系の接着剤の開発が進むとともに徐々に置き換わりました。また、段ボール用途ではアルカリが表面に浮き出す現象が問題視され、でん粉系(コーンスターチ)接着剤への置き換えが進みました。
一方、無機の特長である耐熱性や耐火性が求められる用途として、化粧板やガラス繊維などの建材や保温材、コーティング剤などには今でも広く利用されています。
段ボール向けとしてはコスト面が重視され、有機高分子系に比べて珪酸ソーダ系が安価であることから利用されています。
建材向けとしては火災防止の観点から耐熱性や耐火性が求められ、コーティング剤としては耐摩耗性が求められます。珪酸ソーダは二酸化ケイ素(SiO2;シリカ)と酸化ナトリウム(Na2O)を主成分とする薬品であり、特に二酸化ケイ素の効果により高い耐熱性・耐火性を持ちます。
また、施工現場でのハンドリングという観点からは、使用時に容易に接着できることが求められます。珪酸ソーダは炭酸ガスやアルコール、酸性物質により簡単に硬化して耐熱性や耐摩耗性が発現する特徴があります。
鋳物用途では、加熱して溶かした金属を流し込む型を作る際のバインダーとして使用されます。砂に珪酸ソーダ(水ガラス)を混ぜ込んで形を作りCO2ガスを吹き込んで硬化させる方法と、砂に珪酸ソーダ(水ガラス)と硬化剤を添加し自硬化させる方法があります。
金属を流し込む(鋳込み)時には、ある程度の強度が必要となります。また、冷えた金属を取り出す際には型を壊す必要があるため崩壊性が必要となります。つまり、強度と崩壊性という相反する性質が要求されます。
珪酸ソーダを使うとガッチリ固まり強度は出ますが、崩壊性が悪いことや砂の再生が困難であるという欠点があります。昔は再生できなかった砂は廃棄する方法が取られていましたが、社会の環境意識の高まりにより容易に廃棄することができなくなり、砂の廃棄にも多額のコストがかかるようになりました。そのため砂のリサイクルが重要視され、それが可能なバインダーとして有機系樹脂への置き換えが進み、珪酸ソーダ(水ガラス)の使用は縮小傾向にあります。
近年では有機系樹脂の臭気とガスの発生という環境面での問題から珪酸ソーダが再注目され、改めて珪酸ソーダ(水ガラス)を使用する動きが広まっています。従来の欠点であった崩壊性や砂の再生についても技術開発が進められています。
紙、パルプ用途では、紙を作る際の漂白工程での漂白剤の安定化や古紙の脱墨で使用されます。木材や古紙から取り出したパルプには着色成分が含まれており、用途や製品に応じて漂白されます。
また、インクの裏抜き防止として紙に配合するシリカ分(ホワイトカーボン)の原料として珪酸ソーダ(水ガラス)が使用されるケースもあり、特に紙が薄い新聞紙には多く使用されています。
漂白剤の自己分解を抑制すること、パルプの汚れを分散懸濁することが求められます。
漂白剤としては主に過酸化水素水が使用されますが、これは過酸化水素水の酸化漂白作用を利用したものです。過酸化水素水自体は不安定な物質で簡単に水と酸素に分解する性質を持っています。消毒液の「オキシドール」には過酸化水素水が3%程度含まれていますが、使った時にシュワシュワと泡立ったという経験をされた方は多いのではないでしょうか。あれが正に過酸化水素水が分解して酸素が発生している状態です。
ただでさえ不安定な物質である過酸化水素水は、漂白工程中に含まれる微量金属成分によってさらに分解しやすくなるという性質を持っています。過酸化水素水に珪酸ソーダ(水ガラス)を添加することでキレート効果により過酸化水素水の自己分解を抑制し、安定化することができます。また、珪酸ソーダ(水ガラス)は適度な強さのアルカリ剤であることから、汚れ成分の分散懸濁を効果的に行うことができます。
石鹸、洗剤用途では、界面活性剤のビルダー(添加剤)として使用されます。
一般にビルダーは界面活性剤と併用して洗浄性能を向上させ、洗剤の製品形態を安定化させることが役割とされています。ビルダーの主な作用は以下のとおりです。
珪酸ソーダは③④⑤⑥に対して有効で、特に⑤の効果が優れています。繊維の洗浄においては、珪酸ソーダ(水ガラス)の緩衝作用によって必要なアルカリ度を保ちながら、蛍光剤の効果を損なわずに洗浄性能が発揮されます。
汚れ物質を分散懸濁させることと、適度な強さのアルカリ性であることが求められます。珪酸ソーダ(水ガラス)は繊維などの洗浄対象にダメージを与えない適度な強さのアルカリ剤であり、汚れの分散懸濁を効果的に行うことができます。
珪酸ソーダ(水ガラス)が使用される合成洗剤は粉末洗剤が多いのですが、時代の流れと共に消費者の人気は粉末から液体へと移り、現在では液体系が主流となっています。日本石鹸洗剤工業会によると、液体洗剤の販売量・販売金額が粉末洗剤を上回ったのは2011年とのことです。2019年の統計では粉末洗剤14万7775トンに対し液体品洗剤78万3821トンと5倍以上の数量差にもなります。
販売数量では苦戦を強いられている粉末洗剤ですが、洗浄力が強いことに加え比較的安価であることから依然として根強い人気があり、また溶けやすさが改善されるなど使いやすさが向上していることから再注目されています。
ホワイトカーボンやシリカゲルなどを製造する際の原料として使用されます。
珪酸ソーダ(水ガラス)などのアルカリ塩と酸を反応させ、生じる二酸化ケイ素の沈殿をろ過・水洗・乾燥・粉砕した白色粉体で、微粉末珪酸とも呼ばれます。反応条件や後処理工程を変えることで表面積や分散粒子径などの異なる物性を持つシリカ粒子ができることから、ゴムやプラスチックの添加剤、製紙工程の添加剤、農薬の分散剤、合成樹脂の改質剤、練り歯磨き配合剤などさまざまな用途に使用されています。
なお、「ホワイトカーボン」はカーボンブラックに対する呼称で、シリカなどのケイ酸系の白色充てん剤のことを指します。白いカーボンであるわけではありません。ゴムの補強剤で最重要かつ最強の材料であるカーボンブラックに次ぐ優れた補強性を示すことからこのように呼ばれています。
珪酸ソーダ(水ガラス)などの珪酸アルカリ塩に酸を加えて反応させたものを水洗し、乾燥させることで得られる多孔性の無定形シリカです。単位体積あたりの表面積が大きく物質を吸着する性質を持つことからさまざまな用途に使用されますが、乾燥剤としての需要が最も多くなっています。
上記用途以外にも珪酸ソーダ(水ガラス)はさまざまな用途に利用されています。
業界 | 用途 |
建材 | 石膏ボードやプラスチック材、パッチング剤、目地材の粘結材 |
窯業 | 耐火モルタル、耐酸モルタルなどの粘結材、粘土の沈殿分散材、陶磁器の解膠剤 |
水道 | 河川水に含まれる中の微量な不純物除去のための凝集剤 |
溶接棒 | 溶接棒表面のフラックスの接着剤 |
繊維 | 染色工業、捺染の媒染材、繊維漂白助材、繊維仕上充填材 |
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